疑ってごめんね

ある日のオンライン授業で、T君が私に聞きました。

「ぼくね、今、トカゲ飼ってるんだけど。それがめちゃくちゃぼくになついていて。そのこと書いていい。ぼくにすごくなついていて、手の上でエサを食べるんだよ!」

「いいよ。じぁ、そのトカゲのこと書いてよ。」

と、返事をしながら私は、トカゲが懐くわけないでしょ、と心のどこかで疑っていました。ところが、次の瞬間。zoomの画面には、ほぉ~らと言わんばかりにT君と一匹のトカゲ。T君は優しくつまんでトカゲの顔を見せてくれました。

「デカだよ。かわいいでしょ……。」

T君は得意げです。私は、びっくりした同時にごめんなさいと反省しました。

 

私は、どうしても「思い込み」で物事を見てしまいます。みなさん、そんなことはありませんか。時には思い切り子どもの世界に入り込んで、子どもの視点でいろいろなものを見てみるのも良さそうです。

 

トカゲが懐いているのかいないのか、本当のことはわかりません。トカゲは野原に帰りたいと思っていて、無理やり容器の中で生かされているだけかもしれません。でも、T君は自分に懐いていると信じて愛着を感じ、愛情を持ってお世話しています。とある一匹のトカゲとの出会いで、ひとりの男の子の心が育まれているって素敵ですね。

 

自分が大切にしている生き物のお世話について、言語化する機会はたくさんあるようでそうでもありません。人間以外の生き物は言語を持たないので、その生き物との触れ合いは「言葉」ではない何かの相互作用から感じとっているものとなります。作文に書くということは、子どもがそこから何を感じているのか、目に見えない何かを文字にしていく作業ということになります。そして、その作業をしながら、何かを考え感じ取っているというのも事実です。そうやって、子どもの心が育まれていくのだなぁと、「作文」という世界に魅力を感じます。

 

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