私の名前 嫌いでした

 「景子ってどうして。この名前の意味は、なに。」

小学生だった私は、母にたずねました。その返事は、父方の祖父が12画の漢字が良いと名付けた、意味は特に聞いていないとのことでした。

「え~、それだけぇ。」

たしかに、従兄弟たちの名前もみんな12画の漢字です。「名は体を表すって言うけど、何にもないじゃん」「景子なんてちっとも可愛くない」「け なんてやだやだ まみむめも らりるれろ の もっと可愛い女の子っぽい名前がよかったのに」「まりちゃんとか いいなぁ」私はずっとそう思って大人になったのです。

 先日、作文教室の子どもたちに「漢字の成り立ち」について話したいと思い、漢字辞典をパラパラとめくってみました。「へぇそうだったのか」と時間を忘れていろいろな漢字を見るべく、辞典の中をのんびりお散歩することになりました。

「そうそう 景子の景もみてみよう」

何気なくページをめくってみると、とてもうれしいことが書いてあったのです。

 

「日(太陽)と京(明らか)とを組み合わせた字。太陽の明るい光のことを表す」(光村図書 小学新漢字辞典)

 

「わぁ。それじゃぁ、私はお日さまの子どもってこと。すてき。お日さま作文教室にピッタリ。」

この瞬間から私の「景子」という名前が大好きになりました。

 多くの学校で、子ども一人ひとりにタブレットパソコンが支給されました。とても便利です。調べたいことはあっという間にネットで答えを見つけ、小学生なのにパワーポイントでみるみるうちにプレゼン資料を作ってしまいます。子どもたちの学びの場でも、大人社会と同じように一対一対応で物事が処理されていくのを目の当たりにすると、これで良いのかしらと、タブレットの使い方を説明しながらも首を傾げてしまう私がいるのも現実です。

 便利な道具は上手に使う。でも、たまにはのんびり紙の辞書や絵本、小説の世界をお散歩して、心もすくすく育ってほしいなぁ。青空でにこにこしているお日さまを見ながら、子どもたちの笑顔を思い浮かべています。